2/9 青ヶ島上陸 鬼ヶ島に入るとそこは竜宮城だった


 いよいよ出発日。羽田から八丈島までは飛行機で。空港でヘリに乗り換えです。愛らんどシャトルの窓口で荷物を預け、搭乗時間を待ちます。ヘリは自由席なので、景色が見やすい前の席に座りたかったのですが、残念ながら取れませんでした。まぁ一応窓際は確保。しばらく機体点検したのちにいよいよ出発です。搭乗場所から滑走路に移動。ヘリもタキシングするんですね。滑走路からついに空へ。(飛行機と比べれば)非常に小さな機体なのでもっと揺れるのかと思っていたら、とても安定した飛行で、初めてのヘリはなんだかあっけない感じでした。

 しばらく進むとついに青ヶ島が見えてきます。遠くから靄の向うに見える島は、桃太郎に出てくる鬼ヶ島のようにも見えます。テンションあがる。

 北から島に近づくと、切り立つ崖が視界を覆ってしまいます。いやもちろんそんなに崖に近づいているわけではないんですが、崖しか目に入りません。要塞感がピークです。


 で、あっというまにヘリポート*1に到着。青ヶ島上陸。ヘリから降りると、そこはとても穏やかな空間でした。集落は斜面に位置しているのでヘリポートからざっと見渡すことができますが、とても「明るい」雰囲気です。外から見る青ヶ島と内から見る青ヶ島は印象が180度違います。入るのは厳しいが、いったん入ってしまうと内は温かく、いつまでもこの場にいたくなってしまいます。帰り難い竜宮城みたいなもんですかね。

天候は少し雨がぱらつきましたが、すぐに止み、昼からは綺麗に晴れました。かなりラッキー。


 ヘリポートには宿の人が迎えに来てくれてました(歩いても5分くらいの距離ですが)。預けていた荷物を待合所で受け取って車で宿へ移動。杉の沢さんにお世話になります。お昼まで1時間ほどあるので、杉の沢さんのおすすめで、さっそく大凸部に移動。

大凸部は島の最高峰だそうです。ただもともと集落が標高の高い場所に位置することもあり、道の斜度はそれほどでもなく、整備されておりとても歩きやすい道でした。苔むした岩肌が歴史を感じさせます。


 15分ほどで大凸部に到着です。まさにあの有名な「青ヶ島」が目の前にあり、上陸からいきなりクライマックスを迎えた(迎えてしまった?)気持ちになりました。外からの侵入を拒むような険しい外輪山、その外輪山を這うように切り開く道路。その内側には柔らかな「カヌレ」丸山。広がる畑は人の力強い営みを感じさせます。

 あ〜青ヶ島来てよかった〜

とまぁ来て早々満腹感を味わってしまったわけで。

しばらくこの景色を堪能してから下山。まだ時間はあるので尾山展望公園に向かいました。

https://www.mapillary.com/map/im/GSMtuinzKBMsEGl9w5ySRg
鳥居から東台所神社へは玉石の階段を通ります。これがまた急な階段。階段というより急斜面に玉石を敷き詰めただけと言ってもよいくらい。上りだったからよかったものの、東台所神社から下るのは絶対やめといたほうがいいです。


東台所神社でお参りして尾山展望公園に向かいます。途中の道からは、丸山と集落が一望できます。展望という意味ではこのあたりが一番いいかも。丸山を眺めながらのんびり遊歩道を歩きます。穏やかです。と言っても、今いる場所はあの険しい外輪山の上のはずなんですけどね。


お昼が近づいてきたので山から下ります。途中で出くわすのは巨大な向沢取水場。衛星写真で見るとブルーシートでも敷いているのかと思っていましたが、コンクリートに緑色のペイントを施しているようです。


道を下りきって集落に入ると、南無妙法蓮華経と刻まれた碑が。小さな鳥居もあります。道祖神とか塞の神でしょうか?外輪山の上にいるときは夢の中のように感じていましたが、山を下りてこの碑を見たときに、此岸に戻ってきたんだなぁと感じました。

で、青ヶ島の歴史を紡ぐ佐々木一族(?)の碑。まず佐々木初太郎氏。池之沢地区開発に尽力したそうです。丸山のお富士様の説明板に功績が記載されています。 https://www.mapillary.com/map/im/waNxKp__Np-zCj0sf_ro7Q

こちらは佐々木豊太氏。教育者であったようですね。ただ豊太氏の名前はwebで調べても出てこなかったので詳細はわかりません。

道沿いにお地蔵様がいくつかあります。島の中には小さなお社はたくさんありますが、お地蔵様はこの通りにある2か所のみだと思います。お墓の多いエリアだからでしょうか?


https://www.mapillary.com/map/im/n8i8WcEZg-Bb3fpOpG-cNQ
集落に戻ってきてお昼をいただきます。杉の沢さんは居酒屋もやっていて、食事はこちらでとります。この日はうどんをいただきました。島で採れた岩ノリが入っていて、これが美味しかった!コシが強くて味もしっかりしてました。また食べたい。

お昼から池之沢に行くのは時間が足りなさそうなので、今日は岡部地区をまわることにしました。


まずはジョウマンへ。眺めが良いところだろうと思って向かったものの、特に何もなし!ここは星空を見に来るところ!

ヘリポートを通り抜けて金刀比羅神社へ。藪の中に突っ込んでいきますが、道はよく整備されているので問題ありません。この神社は還住成功により建立された?そうです*2

神子の浦展望公園へ。島の中で崖の下まで見えるスポットはあまりないので貴重です。(通行禁止になっている道を下っていけば別ですけど…)

村のほっとステーション、十一屋酒店。ここに来れば日用品からお土産まで何でも揃います。ふれあいサウナに行く人はこちらで食材を調達するのが吉。あいにく当日は食べ物系のお土産は見当たりませんでした(青ヶ島の食べ物系お土産は八丈島空港のほうが充実してたりする…)。


十一屋酒店で還住Tシャツと手ぬぐいを購入。Tシャツは還住太鼓をたたくときに着る法被と同じデザインだそうです。手ぬぐいは青ヶ島の名物がポップにデザインされています。イラストと名前を全部つなげられたら、あなたも青ヶ島マスター?

佐々木家シリーズ:佐々木次郎太夫墓。青ヶ島への「還住」を果たした大功労者です。

集落の南を通る道は、車で通行するのは厳しいですが、シダが生い茂っていて歩くには雰囲気のいい道です。ただし坂道は急です。島内で一番斜度がきついような気がします。

名主屋敷跡。名主とは佐々木次郎太夫さんのことですね。屋敷そのものは残っていませんが、玉石垣は綺麗に残っています。玉石垣以外にも、いろんな種類の石垣があります。石垣を組んだ時代が違うんでしょうか?

大里神社。島の鎮守様です。東台所神社ほどではありませんが、こちらも玉石の階段がきつい。上ったところ*3にお社がいくつかありますが、もう少し先*4奥の院(?)があります。途中にあった小屋は民家かと思いましたが、社殿だったようです。中にはお祭りで使うお面が鎮座しているとのことですが、残念ながら見逃してしまいました。 *5

佐々木卯之助翁之碑。神奈川県茅ヶ崎の幕府管理鉄砲場で農民の耕作を許したため、青ヶ島島流しにされたそうです。島の北側に面するこの場所からは、遠く茅ケ崎の海が臨めるのかもしれません…

還住像。上記の佐々木次郎太夫さんです。
青ヶ島には何人も「佐々木」さんが登場するので、ここで一つ整理しておきます。

名前 生年 説明 島内史跡
佐々木次郎太夫 1767-1852 還住の人 お墓、屋敷跡、還住像
佐々木卯之助 1795-1876 茅ヶ崎から流された人 (青ヶ島での活動は?) お墓、記念碑
佐々木初太郎 1864-1920 池の沢地区開拓の人 お墓、お富士様

…卯之助さんの苗字が佐々木なのは偶然なのでしょうか?


渡海神社。ヘリポートから南にまっすぐ来た道をまっすぐ細い道に入っていくと*6、民家の庭先に出ます。道を間違ったと思ってしまうかもしれませんが、よくよく右手を見てみると、木々の間に小さな道がきっとみつかります*7。その道を進んでいくと神社にたどり着きます。ここには天明の大噴火(還住の原因となった噴火)で亡くなった方が祀られています*8

集落内をくまなく歩きまわって、陽も落ちてきたので杉の沢さんに戻りました。晩御飯は小鉢がとてもおいしかったです。お酒が好きな人なら青酎を楽しめるのでしょうが、私は下戸なので残念…