歩行者向けに安全なルートを検索するために今後有用になるかもしれない情報

はじめに

ここのところ、毎日のように歩行者の交通事故がニュースになっています。歩道にガードレールがなかったために事故が起こったとの声もあり、より安全が求められているように思います。

では実際にどのような設備があれば歩行者の安全が確保できるのでしょうか。

ごうだまりぽさんのツイートをきっかけに、ちょっと考えてみました。

歩行者の交通事故実

まず歩行者の交通事故の実態を調べてみます。

2017年度の歩行者の交通事故死者数は1347人であり、自動車乗車中の1221人よりも多く、最も高い割合となっています*1。歩行者は最も危険に晒されているのです!

そして、歩行者の死亡事故では、横断歩道外横断中の事故が50%、横断歩道横断中の事故が20%強であり、車道横断中の事故がほとんどを占めています*2。つまり、事故の多くは車道上で発生しています。逆に言えば、歩道上は基本的には安全であるとも言えるでしょう。

ただし、自動車単独事故ではガードレールなどに衝突したケースが多いとあります*3。つまりガードレールがあったために自動車の事故ですんだのであり、ガードレールがなかった場合は歩行者に衝突して死亡事故につながった可能性も否定できません。実際、工作物(ガードレールなど)に衝突したことによる運転手の死者数が21名(H30, 神奈川県)であるのに対し、横断歩道横断中の歩行者の死者数は18名(H30, 神奈川県)であり、ガードレールの設置により防がれた潜在的な歩行者死亡事故は非常に多いと言えるでしょう。

事故の時間帯に関しては、夜間の死亡事故が約70%を占めています*4。また事故時の自動車は、直進走行していた割合が80%に達しています*5

以上のデータから見るとおおまかには、

  • 夜間で
  • 車道の横断中に
  • 直進走行している自動車により

歩行者の死亡事故が発生していると言えるでしょう。補足として、ガードレールがあったことによる事故回避も無視できないと考えられます。

有用かもしれない情報

では歩行者向けにルート検索を行う場合、どのような情報を考慮すれば「安全」が確保できるでしょうか。

まず「夜間」については、夜間にルート検索する場合は街灯が整備されている歩道、または周囲が十分明るい繁華街の道を選択することが考えられます。理想的には、時間帯ごとの周辺の明るさを考慮したほうがよいかもしれません。

次に「車道の横断中」については、必ず歩道および横断歩道を使うルートを選択するべきでしょう。可能であれば歩道橋や地下道を選択すべきでしょう。

「直進走行」については、自動車が直進走行中に高速になり死亡事故につながったと考えられます。ですので、走行速度の実データまたは道路の制限速度情報を考慮するのがよいでしょう。

補足として「ガードレール」は、そのままガードレールの有無を考慮すればよいでしょう。

歩行者向け経路検索の事例

では上記のような情報を考慮した歩行者向けルート検索サービスは存在するのでしょうか?

残念ながら今のところは存在しないようです。様々な地図サービスでは歩行者向けルート検索ツールを提供していますが*6、考慮している情報は「横断歩道」「歩道橋」「階段の有無」「屋根の有無」までのようです。「街灯の有無」「自動車走行速度」「ガードレール」などは考慮されていないと思われます。

なお参考としてですが、車いすやお年寄り向けに、道の斜度や縁石の有無を考慮したルート検索が可能なサービスは存在しています*7

OpenStreetMapに情報を入れる場合

ではなんでも情報を入れられるOpenStreetMapにこれらの情報を登録してみましょう。どんな「タグ」を使ったらよいでしょうか。ざっとリストアップします。

  • 街灯の有無:lit=yes/no *8
  • 横断歩道:highway=footway + footway=crossing *9
  • 歩道橋:highway=footway + bridge=yes
  • 地下道:highway=footway + tunnel=yes
  • 車道の最高速度:maxspeed=* *10
  • ガードレール:barrier=guard_rail *11

OpenStreetMapのデータを使った歩行者ルート検索では、現時点では街灯やガードレールの有無は考慮されていません。ですが、これらの情報が整備されていけば将来的には「安全な」ルート検索が可能になるのではないでしょうか。

ご安全に!

参考情報

逆のアプローチとして、実際の交通事故が多発する現場を避けてルート検索する方法も考えられます。警視庁は交通事故発生マップを公開しており*12、ヒートマップを避けたルート検索が考えられます。

ホンダは事故多発場所やユーザからの投稿を元に安全なルートを検索するセーフティマップ*13を提供しています。こういったデータを誰もが使えるようになるといいですね。