複合汚染

「複合汚染」(有吉佐和子ISBN:4101132127)を読む。なかなか興味深い話だった。著者の有吉氏が参議院選挙で紀平氏の応援をするのだが、彼女の主義主張を知らずに応援している。そんなもんなのか。適当だね。

…環境の話?あまりコメントする気力が湧かないなぁ。「沈黙の春」については(内容はともかく)古典的価値はあるのかなと思ったが、「複合汚染」にその価値は感じられなかった。

複合汚染

表題にもなっている複合汚染だが、初出の部分(P122)を引用してみる。

(専門家)「BHCと水銀農薬の相乗作用ということも考えなければなりませんね。順列組み合わせで、二つずつ、三つずつと組み合わせて実験しなければなりませんから」
(有吉氏)「気が遠くなるほど手間がかかりますね」
(専門家)「ええ、複合汚染ですから」
やっぱりそうか、そういうことになるのか、と私はここに到って更に愕然とした。
複合汚染というのは、二つ以上の毒性物質の相加作用および相乗作用のことである。
(カッコ内は村本の補足)

専門家は相乗作用のことを言っているのに、有吉氏は相加作用を付け足してしまっている。毒性物質の相加作用なんて当然のことであるから、わざわざ複合汚染などと名前を付けるからには相乗作用のみを扱わなければならないだろう。もちろん有吉氏もそこは分かっているようだが、初出のところではきちんと書いて欲しいものです。
しかも複合汚染(相乗作用)の可能性があるというだけで、ここでは実際のデータは示されていない。人の話だけでここまでできるエネルギーはすごい。
P158には相乗作用が確認された組み合わせとして以下の三つを挙げている。

  • PCBとDDT
  • BHCとPCB
  • PCBとABS

でも検索してみたけどよく分からなかった。WEB上にあらゆる情報があるとはもちろん思っていないが、本当に確認されているの?
否定的なページをふたつほど

その他

全体的に、有吉氏は人がいいんだろうなという印象を受けた。人の言う話をそのまま素直に信じてしまうんだけど、対立する人の話は聞いていない。がんばっているのはいいけど、空回り感が…

この本で非常に良いと思ったのは、(多少ではあるが)グラフや表を使っているという点です。これは「沈黙の春」や「奪われし未来」よりも優れています。数字を出さないと水掛け論になってしまいますから。

最後に一番面白かった文を引用してみる(P359)。

(有吉氏)「私が嘘をつくわけがないでしょう?」

とにかくすごい自信だ(笑)