分散電源vs集中電源 電気と熱の同時利用編 その一

安井至氏が給湯法の選択について検討していた。ちょうどよい機会なので、前々から書こうと思っていた電気と熱の同時利用について検討してみる。

「給湯装置の選択その2」*1では、一次エネルギー基準で給湯装置を比較している。比較方法の詳細についてはリンク先を見てもらうとして、ここではその結果を引用します。

一次エネルギー[MJ]
エコキュート 17.07
ヒータ式電気温水器 78.34
ライフエル 6.27
ガス湯沸し器 34.35
エコウィル 23.32

この計算結果から、「(ライフエルが)エコキュートよりもかなり良いことは確実」と結論を出していますが、かなり違和感があります。計算シートを見て一番気になった点は、コジェネの場合の計算方法が
「(熱の発生に必要な一次エネルギー)=(使用した全一次エネルギー)-(副産物として発生した電気の一次エネルギー)」
となっているところです。この計算方法だと、もしライフエルの発電効率が火力発電効率と同じになった場合、風呂を沸かすのにエネルギーがいらない、ということになってしまいます。でも、たとえ効率が高くてもライフエルを動かしている以上エネルギーは使うので、「エネルギーがいらない」わけじゃない。*2

ということで、一次エネルギーを比較するためには、電気とお湯の使用量をそれぞれ想定して、トータルでどれくらい一次エネルギーが必要になるかを計算したほうがいいんじゃないかと思います。

とりあえず、ここではライフエルにもっとも有利な条件で検討してみます。つまり、ライフエルの運転で出てきた電気と熱が、ぴったり使いきれる条件です。都市ガス1MJをライフエルで燃やすと電気が0.33MJ、熱が0.45MJ得られますが、ほかのシステムを使ってこれと同じ量を得るのにどれくらい一次エネルギーが必要なのかを計算します。

発電効率 熱回収効率 一次エネルギー量[MJ] 発電量[MJ] 熱発生量[MJ]
ライフエル 0.33 0.45 1 0.33 0.45

まず、火力発電で電気を0.33MJ得るためには、一次エネルギーが0.89MJ必要です。

発電量[MJ] 発電効率 一次エネルギー量[MJ]
発電 0.33 0.37 0.892

次にお湯ですが、エコキュートでお湯を0.45MJ得るためには、一次エネルギーが0.31MJ必要です。電気温水器やガス湯沸し器についても下に示しています。計算条件については安井氏のページをご覧ください。

熱発生量[MJ] 熱回収効率 一次エネルギー量[MJ]
エコキュート 0.45 4.59(COP)×0.9(効率)×0.95(パイプロス)×0.37(発電効率)=1.45 0.310
ヒータ式電気温水器 0.45 0.9(効率)×0.95(パイプロス)×0.37(発電効率)=0.32 1.42
ガス湯沸し器 0.45 0.82 0.549

ということで、電気を0.33MJ、熱を0.45MJ得るのに必要な全一次エネルギーは次のようになります。エコウィルは比較が面倒なので省略。

熱発生用一次エネルギー[MJ] 発電用一次エネルギー[MJ] 全一次エネルギー[MJ]
ライフエル - - 1
エコキュート(+発電) 0.310 0.892 1.20
ヒータ式電気温水器(+発電) 1.42 0.892 2.3
ガス湯沸し器(+発電) 0.549 0.892 1.4

この比較でもライフエルが最も良いという結論は変わりません。ですが、エコキュートと比べても大差ありません。しかも、今回はライフエルに最も有利な条件で計算したので、電気と熱の割合が変わったときにどうなるのかは検討する必要があります。

ちなみに安井氏のページの最後の選択肢に対し、私としては、
(6)昼間の電力でエコキュートを使う
という選択肢をとりたいです。運転費用は高くなりますが、半日の保温による効率低下が避けられますので*3。といっても、実際に導入計画があるわけじゃないけどね。

続く

ここでは火力発電効率は37%としましたが、今まで書いてきたように*4、同じ天然ガスベースで比較したいので、火力発電効率は47%としたいところです。あと、電気と熱の比率を任意の割合にしたときにどれが最良かを検討してみるつもりです。いずれ。