ソロモンの指輪

「ソロモンの指輪」(コンラート・ローレンツISBN:4150502226)を読む。動物行動学の話。高校の物理の先生が勧めていたのをなぜか思い出したので。
ふつうに面白い。動物やコンラート氏の笑える行動を集めているという面と、動物の不思議で興味深い行動を集めている面の両方から楽しめた。ひとつひとつのエピソードも短くまとまってるし、本全体もそれほど量はないので、すぐ読める。お気軽ファーブル昆虫記といったところか?*1
だけど、どこかで読んだり聞いたりしたことのある話ばかりだったような気がする。もしかしたら私が忘れてるだけで、昔に読んだことがあったのかも。
こういう本は、小さい頃に読んでおくものだと思うけど、どれくらい効果があるのやら。私も小学生の頃にファーブル昆虫記ダイジェスト版みたいなのを読んだ記憶があるけど、へぇ〜って思うくらいでそんなに感銘は受けなかった(と思う)。この年になって読むと、かなり感動する。化学の授業でも、酵素の鍵-鍵穴説を単なるイメージ(反応するものとしないものがあるという区別を示しただけ)だと捕らえていて、巨大な分子が化学的な適合を示すだけじゃなくて物理的三次元立体構造も適合を示すという不思議さまでは認識していなかった。小さな頃は教えられた知識をそのまま受け入れ、そういうもんなんだと思い込んでいた。つまりそこに不思議さを感じることはできなかった。そう思うとなんか悲しい。他の人はどうなんだろう。違うといいけど。

虹の解体

動物がいかにすばらしいものであるかを読者に物語ろうとするとき、(中略)厳密な科学論文の場合と同様に、ひたすら事実に忠実であるほうが、適切でさえあると思う。(中略)もし、研究の客観性、理解、自然の連繋の知識というものが、自然の驚異への喜びをそこなうなどと考えたとしたら、これほどばかげたことはない。むしろその逆なのだ。(P5)

ここでも虹の解体と同じテーマが。でもこの狙いがこの本で達成できているかというと、そうでもない気がする。「事実に忠実」な記述と言うにしては、面白いエピソードを集めすぎてるのだ。難しいところだ。

擬人化

カラスの行動を「高貴」や「俗物的」と表現したことについて、

私はけっして擬人化しているわけではない。(中略)むしろ私はその逆に、どれほど多くの動物的な遺産が人間の中に残っているかをしめしているにすぎないのだ。(P87)

物は言い様という気もするけど、妙に納得してしまった。

*1:岩波の1巻しか読んでない