アンチ・ドーピング 98ツールのEPO陽性結果を公表
- 1998年ツールドフランスで採取された尿サンプルについて、2004年にEPO分析が実施された。これまで分析結果は公表されていなかったが、今回公表される運びとなった。*1
- 結果は以下のとおり。*2
- EPO陽性(18名)
- マルコ・パンターニ(イタリア)
- ヤン・ウルリッヒ(ドイツ) 2サンプルで陽性
- ローラン・ジャラベール(フランス)
- ジャッキー・ドゥラン(フランス)
- ローラン・デビアン(フランス)
- エリック・ツァベル(ドイツ)
- イェンス・ヘップナー(ドイツ)
- マリオ・チポッリーニ(イタリア)
- エディ・マッツォレーニ(イタリア)
- アンドレア・タフィ(イタリア)
- ニコラ・ミナーリ(イタリア)
- ファビオ・サッキ(イタリア)
- アブラハム・オラーノ(スペイン)
- マルコス・セラーノ(スペイン)
- マヌエル・ベルトラン(スペイン)
- イェルン・ブライレヴェンス(オランダ)
- ボー・ハンバーガー(デンマーク) 2サンプルで陽性
- ケヴィン・リヴィングストン(アメリカ) 2サンプルで陽性
- 疑わしい suspicious (12名)
- 以下考察
- EPOは1990年に禁止されたものの、分析方法の問題から検査が始まったのは2000年からである*3。したがって、1998年時点ではEPOを所有していれば処罰対象になったと思われるが、服用した場合の処罰規定はなかったのではないかと思われる。つまり、今回名前が上がった選手についても、記録剥奪等の処分はないと考える。
- サンプル母集団について検討する。cyclingnewsは、正式公開前ではあるものの、60サンプル中44サンプルが陽性であったと報じている*4。実際にはsuspiciousを入れても33サンプルが陽性であった(重複含む)。では60サンプルとは何か。
- 98ツールでは21ステージが実施されている*5。ドーピングコントロール対象者は、ステージ勝利者、ステージ終了時の総合首位者、無作為2名となっており*6、各ステージで4サンプルが採取されることになる。したがって、総サンプル数は84となる。ただし、プロローグ、第7ステージ、第15ステージはステージ優勝者と総合首位者が同じ選手であるため、採取サンプル数は81と思われる。記事にあったサンプル数60と、ここで計算したサンプル数81の差は不明である。
- 3選手は2サンプルで陽性と報じられている。ウルリッヒについては、8回は検査されたはずなので、特に矛盾はない。ハンバーガーは総合首位になったのは第3ステージだけである。リヴィングストンにいたっては、ステージ優勝も総合首位も取っていない。にも関わらず2サンプルで陽性が出たと報告されたのはなぜか。ランダム検査で当たりまくったとでも言うのだろうか。
- ウルリッヒは8回、パンターニは7回の検査を受けたはずである。しかし、陽性と判定されたのはそれぞれ2回と1回である。つまり、他の選手についても、EPOを取っていたとしても検出されなかった可能性は高いと言える。そもそも検出感度が悪いのか、日数を開けるなど対処すればすり抜けやすいのか。
- フランス議会の報告書原文を見ないことにはなんとも言えないことが多いなぁ。
- 関連情報
- イタリア自転車連盟会長が報告書について言及 http://velonews.competitor.com/2013/07/news/italian-cycling-federation-president-slams-french-senate-doping-report_297088
- (批判してるのか、賛同しているのか、よく分からなかった)
- オグレディがEPO使用を認める http://www.smh.com.au/sport/cycling/stuart-ogrady-admits-to-tour-de-france-doping-20130725-2qk04.html
- チームベルキンがスポーツディレクターのブライレヴェンスを解雇 http://velonews.competitor.com/2013/07/news/belkin-removes-sport-director-blijlevens-after-epo-confession_296975
- ツァベルは、すでに96年のEPO使用は認めていたものの、今回の98年分析結果については明言を避ける http://www.cyclingnews.com/news/zabel-not-yet-prepared-to-comment-on-1998-epo-positive
- オラーノ、ジャラベールは開き直る http://www.cyclingtime.com/modules/ctnews/view.php?p=20032
- ツァベルがEPO使用を認める。 http://www.theguardian.com/sport/2013/jul/29/cycling-erik-zabel-doping-resigns
- イタリア自転車連盟会長が報告書について言及 http://velonews.competitor.com/2013/07/news/italian-cycling-federation-president-slams-french-senate-doping-report_297088
*1:http://velonews.competitor.com/2013/07/news/pantani-ullrich-julich-zabel-among-1998-tour-positives_296735
*2:French Senate releases positive EPO cases from 1998 Tour de France http://www.cyclingnews.com/news/french-senate-releases-positive-epo-cases-from-1998-tour-de-france ,98年ツール総合1位パンターニやウルリッヒら18名の検体からEPO検出 http://www.cyclowired.jp/?q=node/113659
*3:ドーピングとの闘いー事例紹介 http://www.jcac.or.jp/service/antidoping/base_sample_epo.html
*4:Durand admits name will be on French Senate list of EPO positives http://www.cyclingnews.com/news/durand-admits-name-will-be-on-french-senate-list-of-epo-positives
*5:プロローグ+20ステージ(全21ステージ中、第17ステージが中止)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B91998
*6:財団法人 日本自転車競技連盟 競技規則集 https://www.evernote.com/shard/s38/res/c3b30acd-9972-4130-907f-a00694c77e09/JCF_Rule_2012W.pdf