自由意志とかクオリアとか科学への態度とか 〜「トンデモ科学の世界」

「トンデモ科学の世界」(竹内薫茂木健一郎ISBN:4198604088)を読む。図書館で本をあさっていたら、目次で「量子力学は自由意志の起源にはなり得ない」というのが目に付いたから。前に「利己的な遺伝子」ついて書いてるように*1、量子レベルの非決定性が自由意志の起源になると思っているから。

不確定性→自由意志?

不確定性という事実は、人間的自由が持つ何らかの心的エネルギーが分子を動かし、それがなければ別の方向に行っていたはずであったその分子の運動の方向を変えるというようなことが可能である証拠にはならないのです。(P186)

ちょっとびっくり。量子力学と自由意志を結びつける人は、自由意志をなんらかのドライビングフォースだと考えている人が多いってことなんですかね。
私が前に書いた「自由意志」ってのは、そこまで大それたものじゃない。単に機械的運命論*2にしたがわない部分を「自由意志」と呼んでいるだけなんじゃないかと思ってるだけ。将来、どんなに科学が発達しても、あなたが総理大臣になれるかなれないかはわからないんだから、「自由意志」でがんばってね、って感じ。

そのほかの部分

ついでにほかの部分も一通り読んでみた。Part1は「トンデモ科学」と呼ばれるものをざっと解説してあり、個々の話題の掘り下げは小さくて物足りないが、概略を知るには悪くはないかな。Part2の心脳問題についても、私にはわからない部分が多々あったが、いろんな人の主張を概説してありそこそこ読めた。茂木氏のクオリア説も、私には理解できなかったが、私の頭が悪いのかもしれないし別に批判するものでもなかった。
私が気になったのは茂木氏の態度だ。

私は、クオリアの問題は、ランダム・ドット・ステレオグラム立体視ができるかどうかという問題と、殆ど同型であると考えている。判る人は判るし、判らない人は判らないのだ。(P238)
しかし、彼らがなんと言おうと、「クオリア」は存在する。(P239)
このような人々(引用者註:「強い人工知能」論者のこと)を真理に導くのは、本当に大変だ。(P242)

相互理解を拒否しているとしか思えないのだ。なんだろうね。

*1:http://d.hatena.ne.jp/muramototomoya/20060206/selfishgene

*2:遠い将来、科学が非常に発達して、究極の物理法則が見つかり、世界のあらゆる状態が確定できて、あとは計算すれば世界のあらゆる状況がわかるって感じ。